読めばわかるコラム:Vol.9 ナレッジマネジメントを成功させる「シクミとシカケ」で強い営業チームになる
トップへ戻る私が新人営業時代の話である。
「たいした事ではないんですが…こんな資料を持っていったらお客様から喜ばれまして…」とチーム会議でなけなしのトピックスを発表すると、私の上司が「この資料はいいぞ!この後の営業部会で発表しろ!」と背中を押してくれたことがあった。
言われた通り部会で発表すると想像以上の反響で、次の日から多くの人が営業カバンにその資料を入れ始めた。なんと営業課長や部長も持ち歩いているではないか!
何十年も前の話なのに、嬉しくて今でも覚えている。
そう、個人の知識や経験、ノウハウを共有し活用する「ナレッジマネジメント」とは、字のごとくナレッジ“マネ”ジメント。単にナレッジを蓄積することではなく、それが“マネ”されてナンボなのだ!
優秀な営業リーダーは、有効なナレッジを持つメンバーにその情報発信を動機づけ、そのノウハウをマネするように促すシクミとシカケを講じている。
今回は、そのポイントについて考えていこう。
ナレッジマネジメントにおける「シクミづくり」とは?
ここでは「シクミ」を意識づけ策、「シカケ」を動機づけ策と定義する。そのシクミとシカケを上手く駆使しながら、チームを動かしていくことが営業リーダーには求められる。
では、今回のテーマであるナレッジマネジメントにおける、シクミづくりとは何か?
一般的には、ナレッジを蓄積し、閲覧するシステム、検索性を高めることがシクミだと想像するかもしれない。
しかし、ここで私が主張したいのは、ナレッジの閲覧システムを整える前に、営業リーダーとしてやるべき意識づけ策があるということだ。それは、
「今はこのテーマについてのノウハウ、知恵が必要だ!」
と現在必要とされるナレッジを、チーム全体に意識づけるシクミを構築することだ。
例えば、新商品の営業シーンで、お客様から「特に困ってないよ」言われた時の対処策が分からず、停滞しているメンバーが多いとしよう。
そんな時の簡単なシクミづくりとしては、月例の営業チーム会議で、「今月のナレッジ募集コーナー」を設置して、「初回訪問時の動機づけトークを募集する!」とテーマ設定すれば営業メンバーからのナレッジが集まる。
他にも、メンバーが提案書の作成に苦労している場合には、「〇〇(テーマ)の提案書のお客様の課題ページを募集!」というテーマ設定している事例もある。
提案書全部ではなく、あるテーマの“お客様の課題を整理しているページだけ”を集めよう!と呼びかけているのだ。テーマが非常に絞り込まれていることがポイントだ。
つまり、優秀な営業リーダーは、
◎「ココがツボだろ!」というナレッジすべき旬なテーマをピンポイントで見極め、
◎ノウハウを持つ発信者に、発信して欲しいテーマを意識づけ、
◎苦労しているメンバーには、「君たちが困っているのは、ココだよねー」と、習得して欲しいテーマを常に意識づけるシクミを構築しているのだ。
つまり、ナレッジマネジメントにおけるシカケづくりのポイントは、こうである。
ナレッジが必要な旬なテーマをピンポイントで意識づけよ!
ナレッジの発信と活用のために必要なシカケ
旬なテーマが設定された次は、そのナレッジをどう発信し、どうマネ(活用)させるのかを考えることだ。シクミを作っても、そこに気持ちが入らないと空回りしてしまう。活用させるためのシカケ(=動機づけ策)が必要なのだ。
ただ、そんなに難しく考える必要はない。
ナレッジを発信してくれた人、ナレッジを上手く活用して成果を出した人が、「あなたはエライ!」と、ちゃんと褒められる風土をつくる事がポイントだ。
私が以前勤めていたリクルートのある部署では、営業ナレッジを発信し、その内容が他の人にもマネされその有効性が認められると、その人の名前が冠として付けられて、全社に広報されるシカケをつくっていた。
「A子の〇〇営業」「B君の3年契約営業」と言った感じだ。
ナレッジ提供者にとっては、自分のアイデアが市民権を得たことになり、中途半端な金銭的なインセンティブをもらうよりも、よっぽど強力な承認・賞賛感を得ることになるのだ。
他のある会社では、TTP賞(徹底的にパクったで賞)という表彰制度をつくり、他の営業メンバーのアイデアを活用して成果を出した人を褒めている。つまり、ナレッジがマネされて、磨かれていく風土づくりをしているのだ。つまり、
ナレッジの発信と活用を動機づけるシカケを考えよ! ということである。
多額の費用をかけたり、手の込んだことをやらなくてもいい。
営業リーダーであるあなたが考えるシクミづくり、シカケづくりで、メンバーの顔が晴れやかになり、営業チームに活気が出てくる。ぜひ、身近なところから、チャレンジしてほしい。
これまで、シクミとシカケについての話が続いていたので、次回は、営業リーダーによくあるお悩み解決についてお伝えしようと思う。営業管理職の方は必読です!